日頃使い慣れている調味料の名称は、よく考えると結構謎めいています。
ポン酢の「ポン」って何?とか。
ウースターソースの「ウースター」って何だろうとか。
物によっては、単にメーカーが商品名をそのように定めて商標登録しているだけで、深い意味はない場合もあるでしょう。
では、「醤油」はどうでしょうか。
醤油が油=オイルを含まない調味料であることは、一目瞭然です。
油が入っていないのに、なぜ「油」?
これは、メーカーが好きなようにネーミングしたとは考えにくいです。
そこで今回は、醤油の「油」の由来について調べてみました!
どうして醤油に「油」という字を使うのか?

醤油の「油」の由来
醤油の「油」の由来について理解するためには、醤油という名称そのものの起源について理解する必要があります。
まず、醤油の「醤」について。
これは、「エキス」に近い意味の言葉です。エキス=抽出液と考えていただければイメージしやすいのではないでしょうか。
この「醤」は、古くは「ひしお」と呼ばれ、何から抽出したエキスなのかによって、いろいろな「醤」が存在しました。
例えば、ベトナム料理が好きな方は、「魚醤」という調味料になじみがあるのではないでしょうか。これは魚から抽出したエキスということで、魚醤と書いて「うおびしお」と読んでいたわけです。
さて、醤油と関係がある「醤」(ひしお)の種類は、「穀醤」すなわち、今でいう「味噌」です。
この穀醤から取れるエキスが今の醤油の原型で、そのエキスが「油のようにとろりとした液体」だったので、「醤油」と呼ばれるようになりました。
つまり、「油」=オイルのことではなく、「とろりとした液体」であれば何でも「油」という字で表現していたわけですね!
醤油の成分
醤油の「油」は、油が成分として使われているためではないことがはっきりしました。
では、現在の醤油の成分はどんなものなのでしょうか。
醤油メーカーとして一番有名なキッコーマンさんのサイトに、成分表示があります。
これによると、主原料は大豆で、それにお塩、小麦、アルコールなどを加えています。
確かに、油は入っていません!
「こいくち」「うすくち」「たまり」醤油の違い
そして、醤油と言えば、種類が多いという特徴があります。
代表的な3種類の醤油、「こいくち」「うすくち」「たまり」の違いを見てみると…
醤油の種類 | 詳細 |
---|---|
こいくち | 日本で一番ポピュラーな醤油で、大抵の一般家庭で使用しているものがこいくち。 塩分濃度:16%程度。 |
うすくち | 日本での生産量は1割強のマイナーな醤油。塩分濃度が低いと勘違いされがちだが、「うすくち」とはその意味ではないことに注意。 |
たまり | 生産量にして2%程度で、うすくちよりもマイナーな醤油。 |
「うすくち」に関しては、塩分濃度が低いので「うすくち」と勘違いする人が多いようです。
実際は、単に色が薄いために「うすくち」と呼ばれているにすぎません。
注意が必要なのは、うすくち醤油は、実はこいくちよりも塩分濃度が高いということ。
こいくちの16%程度に対し、薄口は18~19%です。
この淡い色ゆえに、色がきれいな食材の見栄えをよくしたい場合に使われることが多いです。
醸造控えめの醤油なので、醤油としてのうま味という点ではこいくち醤油に負けます。
たまり醤油とこいくち醤油は、塩分濃度は同程度ですが、原材料として使う大豆と小麦の量のバランスが違います。
こいくちでは大豆対小麦の割合はほぼ1対1ですが、たまりは小麦の使用量が極端に少なく、大豆だけで出来た醤油と言ってもいいくらいです。
「たまり」は、特にお刺身に好んで使われます。
この原材料バランスゆえに、大豆の香ばしさが際立つのも、たまり醤油の特徴です。
こんな風にお醤油の種類の差が分かると、料理によって使い分けをしたくなりますね。
いまのところは、万能のこいくちで全て乗り切っている私ですが…
醤油を「むらさき」という理由

ところで、お寿司屋さんなどでは醤油のことを「むらさき」と言いますよね。
この理由は何なのでしょうか。
これに関しては、異なる説がいくつかあります。
説1:紫=高貴なものという意味で使われたとする説
説2:原料の大豆の色にまつわる説
説3:そもそも「むらさき」は、今の「紫色」と違う色を指していたとする説
説4:醤油の産地の名前に由来するとする説
各説を少々補足すると…
説1:紫=高貴なものという意味で使われたとする説
江戸時代に、関西に対して文化面で対抗意識を燃やした江戸の上流階級が、当時の高級食材である醤油を、高貴なもの=「むらさき」と呼んだ。
説2:原料の大豆の色にまつわる説
醤油の主原料の大豆にも色々と種類があります。中には紫色の大豆もあり、これを使うと出来た醤油も紫色だったので、「むらさき」になった。
説3:そもそも「むらさき」は、今の「紫色」と違う色を指していたとする説
醤油の色は、黒とも暗褐色とも言えますが、昔は醤油の色は、今でいう「赤褐色」だったそうです。
その色を当時は「紫色」と呼んでいたので、醤油もむらさきを呼ばれるようになった。
説4:醤油の産地の名前に由来するとする説
醤油の生産量が多い筑波山は、またの名を「紫峰(しほう)」と言います。
この「紫」から、醤油も「むらさき」と呼ばれるようになったという説です。
「むらさき」という呼び方の由来は、調べればもっと出てきそうです。
さすがはわが国を代表する調味料といったところでしょうか。
まとめ
今回は「醤油に油が入っていないのになぜ「油」という字を使うのか」について調べてみました!
まとめると…
- かつて「穀醤」と呼ばれていた味噌から抽出されたエキスで、「とろりとした液体」が醤油の起源。
「油」とは、当時の表現で「とろりとした液体」を指すので、醤油にもこの文字が使われている。 - 「こいくち」「うすくち」「たまり」など、醤油にはいくつかの種類があり、それぞれに塩分濃度や色調、原材料バランスなどの特徴がある。
その特徴を理解して、使用する料理を使い分けるのがお勧め。
でした!
更に、醤油が「むらさき」と呼ばれる理由についても見てみました!
お刺身大好きなのですが、家ではいつもこいくちで済ませていて、「たまり」の使用経験が少ないです。
今回、たまり醤油の由来を知って、なんだかとてももったいないことをしているような気がしてきました。
「たまり」の小瓶も、今後は常備しようかと思っています。
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